屋久島ツアーで人気の屋久島の民話に、「猿の生きぎも」という話があります。
むかし、むかし。
龍宮の乙姫さまが病気になりました。
ところがその病気は、猿の生きぎもを食わなければなおらないという病気でした。
そこでカメが陸に上って、猿をうまくだまして龍宮へつれてきました。
龍宮に来た猿に、米次郎(かわはぎ)という魚が、
「猿さん、猿さん、おまえは乙姫さまの病気の薬に、生きぎもを取られるのだよ」
といいました。
猿はびっくりしましたが、それから乙姫さまのそばに行って、オンオンオンオン泣きだしました。
「猿さん、おまえはどうしてそんなに泣くか。」
「はい、私は陸の松の木の枝に宝ものをかけたまま忘れてきました。
それを乙姫さまにさしあげたいと思います。しかし、取りに行くことができません。それが悲しくて.・・…」
「それでは、その宝物を取ってきなさい。」
そこで猿はカメの背に乗って、白波をけたてて進みました。
まもなく松の木のある陸の岸につきました。
すばやく瀬にとび移った猿は、
「カメ、カメ、おまえはよくもおれをだましたな。
おれの生きぎもを取って乙姫さまにあげるつもりじゃったろうが」
といったかと思うと、大きな石を持ちあげてカメの背中にドッシンと落しました。
カメの背中はちりんばらんに割れました。
それでカメの背中は今でもあんなに割れているのだそうです。
さて、カメは泣く泣く龍宮へもどりました。乙姫さまは、
「だれか猿に生きぎもを取るとつげたものがあります」
といいました。そこでこ姫さまは龍宮の魚たちを集めて、
「猿の生きぎもを取るというたのはだれか」
と聞きました。けれども、だれも、
「私はいいません」
「私はいいません」
というばかりです。
隅っこに米次郎の魚だけ、じっとだまって、しゃがんでいました。
「さては米次郎がいうたか。」
「・・・」
「米次郎の口が太かからじゃ」
というわけで、かわいそうに口をせまくぬわれてしまいました。
それで米次郎の口は今も小さいのだそうです。
おしまい。